6月17日に兵庫県立芸術文化センターで催されたダニエル・ミュラー=ショット のチェロ・リサイタルを聴いてきました。
日時: 2007年6月17日 午後2-4時
場所: 兵庫県立芸術文化センター大ホール
ダニエル・ミュラー=ショット: チェロ
ロベルト・クーレック: ピアノ
Setlist
1:ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番 イ短調op.69
2:シューマン/ミュラー=ショット:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調op105
(intermission)
Encore
1:ラヴェル:ハバネラ
2:シューマン:アレグロ
3:シューマン:アダージョ
最近売り出し中の若くて美形のチェリストだけあって、芸術文化センターの大ホールが満員でした(驚。やはり老若を問わず女性ファンが多かったです。幸い今回も早めにチケットを取ってあったので2列目で約2Mくらいの距離で聴く事ができ、チェロの音色を堪能してきました。彼のチェロは1700年マッテオ・ゴッフリラーと言う名器だそうですが、至近距離で聴いてもそれほど耳が痛くならない柔らかめの音がしました。勿論弦の選択にもよるのでしょうけれど。
実は先に聴かれたtaoさんのブログで少々予習をさせた頂いてたのですが、taoさんはベートーヴェンにいたく感動されたそうです。本公演では一曲目でしたが、私自身の体調が今一つだったせいか、最初はあまりすんなりと曲に没頭できませんでした。勿論技巧は文句のつけようがないのですが、私のようなクラシック初心者はちょいと置いてけぼりを食らうような突っ走り方であるように思いました。
ピアノはスタインウェイで、やはりからっとした音調。ピアニストのクーレックという方は結構アクションが大きく派手目の演奏をされるので見ていて面白かったです。ただほんの僅かな齟齬なのだと思うのですが、ほんの少しチェロとかみ合っていないような感じを受けました。やっと第3楽章に入って落ち着いてきて、聴き入る事ができましたが、どうも評判ほどの「瑞々しさ、躍動感」は感じ取れませんでした。
それに比べると2曲目のシューマンは初心者向けと言えましょうか、メリハリが利いて分かりやすく、その上ロマンチシズムに溢れていて良かったです。まあやはりミュラー=ショットのような若いチェリストにはロマン派が合うんでしょうね。ただシューマンはこの頃精神障害を発症していて、この曲にも影響が出ていると解説には書いてありましたが、私程度のものには感じる事ができませんでした(汗。
ピアノの方も大分合ってきていたみたいでしたが、アクションが大きい分プロにしては少し音がラフかな、と言う感じはずっとしていました。勿論ミスタッチをされるわけではないんですけどね。ミスタッチと言えば一度楽譜のめくり間違いがあり、自分で直そうとされた時に一度ミスタッチがあったように思いましたが、さすがプロですね、何事も無かったかのように二人息を合わせて続けられました。
この後20分の休憩。この間調律師の方がピアノの高音部をかなりの時間調節されていましたので、やはりピアノ自体の調子が悪かったのか、あるいは途中で強い打鍵のため調律が狂ったのかもしれません。
後半はプロコフィエフの大作。冒頭部は不協和音的な旋律が多く、ちょっと体調の悪かった私はこりゃきついな、と思いましたが、朦朧としてきた途中からアルファ波が出始めたのか、凄くよくなってきました(冷汗。
まあ冗談はともかく大変懐の深い曲で、ミュラー=ショットのこういう難曲を弾きこなしたいのだと言うような強い意思を感じました。ハッ、ハッ、という息遣いも頻繁に聴こえるようになり、逆に家内はそれが気になって集中できなかったそうです。
ピアノも調律が功を奏したか、アクションが大きくても音の乱れが感じられなくなり、その分スムーズ且つダイナミックにチェロと絡み合っていたように思いました。
初演は先日他界されたロストロポーヴィチ氏とリヒテル氏により非公開で演じられたそうですが、そこまでの巨匠レベルまでは行かなくとも凄くレベルの高い演奏を聴いたな、と言う満足感を十分得る事ができました。
アンコールは3曲もあり、大サービスでした。ラヴェルのハバネラは今までと打って変わったリラックスした雰囲気で伸び伸びと弾いておられ、紹介のときの発音もフランス語ぽかったのでフランスの方?と一瞬思ったくらいでした。でもやっぱりドイツ生まれだそうです。後2曲はシューマンでやっぱりシューマンがお好きなようですね。
まあ素人の感想ですのであまり額面どおり受け取らないで頂きたいのですが、最初はやや気負いすぎていたのではないか、と言う気がします。でも最後あれだけのものを聴かせていただいたので満足して帰りました。