ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Belladonna/Daniel Lanois

 U2ピーター・ガブリエルのプロデュースで有名なダニエル・ラノアの新作が出た、という案内がAmazon USAからきたので、早速購入しました。調べてみるとJapanでももう輸入盤を取り扱っていたのでこちらの方に注文をかけたらすぐ届きました。
Belladonna
Belladonna

 題名はベラドンナ、薬草でもあり毒草としても知られている植物の名前。スティービー・ニックスのソロ作にも同名の作品がありました。彼女の場合には自身をベラドンナにたとえてもしっくり来る雰囲気がありますが、ラノアの場合は中年おじさんですから、音楽自身の雰囲気をベラドンナに象徴させているのでしょう。しかしその内容は以前にも増して難解です。

 拙ブログでもオーディオチェックに度々取り上げてきた、傑作の誉れ高い前作ShineではBONOエミールー・ハリスを使い、また自身もボーカルを担当している曲が多かったのですが、今回はなんとオール・インストルメンタルです。数多くの仕事をともにこなしてきたブライアン・イーノアンビエント・ミュージックを思い起こさせますが、曲調はあくまでもラノアの個性を感じさせます。前作で到達した、SEを深く静かに効かせた静謐かつ哲学的な路線をそのまま踏襲しているといってよいでしょう。

 当然今回はBONOのような超高名なボーカリストは参加してませんが、サポートミュージシャンは相変わらず超一流。先日紹介したザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクトにも参加していたいまや世界中でひっぱりだこのドラマーブライアン・ブレイドマーカス・ミラーの後釜としてマイルス・デイヴィス・バンドに参加した経歴を持つダリル・ジョーンズ(b)、停滞気味なアコースティック・ジャズ・シーンにおいて一人気を吐いているピアニストブラッド・メルドー(p)等のクレジットが見られます。この面子ならバリバリのジャズになってしまうはずなのですが、彼等の音楽を思い起こさせる雰囲気は全くなく、ひたすら、ラノアの音楽世界の構築のワンピースとしてはめ込まれているという印象です。

 前作がツボにハマった方には嬉しいプレゼントになるでしょうし、そうでない人には退屈なだけかもしれません。