ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

タブラ・ラサ

 この頃毎日のように「シレンシオー沈黙」というアルバムを聴いています。アルヴォ・ペルトフィリップ・グラス、ウラディーミル・マルティノフといった現代音楽家の作品を、ヴァイオリニストのギドン・クレーメルと彼のアンサンブル、クレメラータ・バルティカが演奏している作品です。

 このアルバムのことを知ったのはオーディオファイルの間では有名なDejavuというサイトでした。オーディオ演奏家としてもステレオサウンドに登場されたことのあるフィルさんが主宰されているのですが、そのフィルさんとダークさんという方が「夢のように美しい曲がある」と絶賛されているのを見てこれは買いだな、と閃いたのです。
 もともとクラシックに疎い私は以前から、オーディオで鳴らすクラシックのヴァイオリンの音色になじめず悩んでいました。「取り敢えずいろいろと聴いてみることです」というTak Saekiさんのアドバイスを受け、私なりにあれやこれや聴いてはみるものの、やはり聴いていて「背伸び」している自分に気が付き恥ずかしくなってしまうのです。そんなところに「夢のように美しい」という一言は魅力的でした。不遜にも「たとえヴァイオリンがつまらなくても演奏自体は睡眠薬代わりに聴ける(-_-;)」と思った訳なんですね。
 すぐにアマゾンに注文したわけですが、見事に私のスイートスポットにハマりました!ただひたすら美しい「カム・イン」は確かに天上の音楽のようで、途中コンコンコンーーと入るパーカッションの音も天国のドアをノックする音に聞こえます。しかしそれよりも私には一曲目の「タブラ・ラサ」でのクレーメルの演奏が、背伸びなしにこれはスゴい!と思えたのです。ある時は怜悧にある時は情熱的(暴力的でさえある)に、あるときは信じられないくらいに叙情的に歌う彼のヴァイオリンはこんな事いうとクラシックファンに怒られそうですが、キング・クリムゾンの「太陽と戦慄」でのデヴィッド・クロスの演奏にも通じるところがあるような気がしました。
 ところでクレーメルの演奏も「タブラ・ラサ」って曲も初めて聴くはずなのですが、どうも昔どこかで目にしたような気がしてすごく引っかかっていたんです。ほんとdeja vuだなあなんて思っていたんですが、先日突然解決しました。ある晩キース・ジャレットの「ウィスパー・ノット」というアルバムを久しぶりに聴いていて、何気なく付録のdiscographyを見ていたらしんがりに「タブラ・ラサ/ギドン・クレーメル」と載っていたんですね。キースは一曲目の「フラトレス」というペルトの曲でクレーメルと共演しているんです。そのあとヤフオクでこれもまた偶然このアルバムのアナログ盤があったので即落札してしまいました。昨日届いて早速ハマっています。B面全体が「タブラ・ラサ」になっていて、これもすばらしい演奏でした。
 最近スヴェトリン・ルセヴという若手ヴァイオリニストのすばらしい演奏を偶然聴く機会もあったし、Takさんの言うとおり、とにかくいろいろと聴いていればそのうちあたりがやってくるんですねえ。Takさんアドバイスサンクス、また素晴らしいアルバムと出会う機会を作ってくださったDejavuにも感謝感謝です。