ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Midas Touch:金子氏の日本対北朝鮮評

 今晩、仕事の帰りに車中でMBS毎日放送をつけたらサッカー番組をやっていて、スポーツジャーナリストの金子達仁氏と元ガンバ大阪永島さんが2月9日のワールドカップ最終予選日本対北朝鮮の戦評をしておられました。ワクワクするほど面白かったので疲れが吹っ飛んでしまうようでした。関西以外の人にもちょっとさわりをご紹介したいと思います。

 金子氏によればこの試合はオセロの白黒が次々に反転していくように、双方の自信が次々に覆されていった試合だったということです。

1:ジーコが試合の2日前に先発メンバーを発表した自信

 それも直前のシリア戦と同じメンバー。これは北朝鮮に手の内を完全に明かしてしまうことになりました。それでも当然勝てるというジーコの自信。そして最初の日本の一点。これでジーコだけでなく日本の選手が自信を持ってしまいました。その自信が安心につながり、攻撃の手を緩めてしまったことが逆に相手の自信に繋がることになります。

2:相手の手の内がわかっていた北朝鮮の自信

 一点をとった後も日本がかさにかかって攻め続ければあるいはその自信も揺らいでしまったかもしれませんが、上述のように攻撃の手を緩めてしまった日本は遠藤福西の調子も悪かったこともあり、相手の思うつぼとなっていきます。

 当然ながら北朝鮮は、先発メンバーを発表してしまった日本の戦術を研究しており、二人の選手交代を含めた対応で当初のプランどおり小笠原サントス小笠原加治のラインを徹底的につぶしにかかります。これで完全に日本の攻撃を封じることの出来た北朝鮮は自信を取り戻しました。

 金子氏が名古屋グランパス選手に聞いたところでは、ハーフタイムにこれは勝てると北朝鮮は盛り上がっていたそうです。そして後半の同点ゴール。これは明らかにセンタリングを失敗したミスキックだったそうですが運良く入ってしまいました。とはいえ、北朝鮮がプランどおりの戦術で攻めた結果であり、選手はこれで勝てると確信したそうです。

3:Midas Touchによる日本の自信回復と北朝鮮の自信喪失

 金子氏が本試合で最高の選手起用と絶賛してたのが、中村俊輔小笠原ではなく田中誠に替えて起用したことです。手に触れるもの全てを金に変えてしまうマイダス王の神話になぞって飛び切り素晴らしい作戦的選手起用をMidas Touchと呼ぶそうですが、まさにそれだというのです。

 一点を入れられた日本は眠りから覚めたように攻撃に転じ北朝鮮をあわてさせます。それでも戦術が変わらなければまだ北朝鮮は対応し続けたでしょう。ところがここで高原中村という北朝鮮にとって未知の選手が入ってきます。それも中村は小笠原とではなくて田中と交代でした。なんと司令塔が二人となったわけで、北朝鮮はどう対応していいのか分からなくなり完全に自信を喪失します。選手も当然中村は小笠原に替わって出てくるものと思っていたので愕然としたそうです。日本はその後かさにかかって攻め続け、ついにはロスタイムに大黒の得点が生まれることになりました。

 この得点は3つのミスキックが重なって生まれたものとはいえ、攻め続けることができて、アジアカップやワールドカップ一次予選でロスタイムに得点して勝ったという自信を日本が取り戻したからこそのものであると金子氏は述べておられました。

 ちなみに3つのミスキックとは小笠原のセンタリングミスでGKに球が行ったこと、福西がGKのパンチングしたボールを蹴り損ねて大黒の前にボールが転がったこと、大黒のキックも正確にミートせずひょろひょろと転がったことです。

 私は試合直後のインタビューで大黒選手が「下が濡れていたので意識してグラウンダーでボールを転がした」と言っていたのを信用したいと思いますが、上述の選手は大黒のミスキックでラッキーと一瞬思ったと金子氏に述べたそうです。

 以上自信が双方を行き来して結局は最初のジーコの自信のとおりになってしまった、と言う結果だがそういう意味で非常に面白い試合だった、特に中村の選手交代は見事だったと結論付けておられます。それ以外にも面白い話はありましたが煩雑になるのでやめておきます。

 「28年目のハーフタイム」以降ずっと金子氏の作品のファンですが、以上のような今日の選評も面白かったです。

28年目のハーフタイム
金子 達仁

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 永島さんの話も面白かったですのでさわりだけ。ジーコは3回ワールドカップに出たスーパースターだが優勝できなかった。だから勝ちに対する執念はもの凄いものがある。だからジーコジャパンはどういうわけか運よく勝ち続けている、という意見は的外れだという視点で話されていました。

 ジーコ大黒を選んだ時から、同点で後半終了間際まで来れば彼を投入することは予定されていた。だから取るべくして取った点なのだということです。この辺、どちらかといえば反ジーコ派の金子氏は異論があるようで苦笑しておられましたが、これも面白い視点だと思いました。

 その後今後の展望も話しておられましたが、長くなるので割愛します。

 TVの中継でもこれだけ面白い解説をやってくれないものですかねえ。民放で見てたんですが、相変わらずの絶叫応援中継でした。